イタリアングレーハウンド

サイトハウンド(視覚狩猟犬)

原産地  イタリア

起源    古代

理想体高(雄雌)32-38cm

JKC理想体重(雄雌)5kg

外観と特徴

イタリアン・グレーハウンドはグレー・ハウンドを小型化して細身にした犬種で、優雅で気品ある身のこなしが特徴的です。

グレーハウンドと同じように、ダブルサスペンションギャロップ(前脚と後脚を揃えて動かし、背中を使って走る歩様)を

使って最速のスピードで走ることができます。


また、美しい曲線的なラインの腰と、バランスのとれたアンギュレーション(結合している角度)をした後肢を持ち、

前肢を高く上げてから踏み下ろす歩き方でのびのびと動きます。短い被毛はつややかで、サテンのように輝いています。

性格

小型のサイトハウンド(視覚獣猟犬)であるイタリアン・グレーハウンドは、同じ系統の他の大型犬とよく似た特質を持ち合わせています。


この犬は走り回ったり何かを追いかけたりすることを好みます。

非常に感受性が強く、穏やかな性格で、見知らぬ人に対しては距離を置いて近づこうとしませんが、

家族に対しては忠実で献身的に接します。


また、こどもや他の犬やペットとも仲よくできる犬種です。

飼育管理

イタリアン・グレーハウンドは外で走り回ったり飛び跳ねたりすることを好みますが、寒さに弱い犬種です。

毎日の運動としては、室内を歩かせたり、ゲームなどで遊ばせたりした方がよいでしょう。

また、フェンスなどで区切られた安全な場所で走り回らせても喜びます。

屋外での飼育はあまりおすすめしません。


被毛の手入れとしては、時々ブラッシングをして抜け毛を取り除く程度で十分です。

加えて、歯を定期的に磨いてあげることもおすすめします。

足が細く華奢なため骨折に注意が必要です。

イタリアングレーハウンドの歴史

イタリアン・グレーハウンドは、何世紀にも渡って存在していましたが、いつ、どこでこの小型化されたグレーハウンドに発展していったのかは明白にわかっていません。
イタリアン・グレーハウンドに近い犬たちが存在していたとされる証拠の品は、トルコ、ギリシャ、そして地中海周辺などで発見されており、なかには2000年以上前に遡るものもあります。この小型化されたグレーハウンドは、中世頃には南ヨーロッパ中で飼われるようになりましたが、特にイタリアの王室に大切にされていました。
この犬種がイギリスに渡ったのは17世紀のことで、イタリアと同じように王室や貴族の間で人気が高まりました。この犬種は、犬についての当時の本に書かれた、2種類しかないトイ・グループのうちの一犬種としても知られ、ヴィクトリア女王の時代には最高の人気を誇っていました。
その後、頭数はだんだんと少なくなり、第二次世界大戦後にはイギリスから消えてしまったのではないかといわれるほど減少してしまいます。理由のひとつとしては、サイズを小さくするためだけを目的とした交配が繰り返され、犬の健康への配慮を度外視していたことが考えられます。
幸いにもこの犬種は、1800年代にアメリカに持ち込まれており、その数は少数だったものの血統は良質なものでした。この犬たちが後に輸入された犬たちと交配され、ヨーロッパでの復活に一役買うこととなります。その後、この犬種の人気は徐々に上昇し、再び高い人気を誇るようになりました。

デズモンド・モリスの犬種辞典より引用

イタリアではピッコロ・レヴリエロ・イタリアーノ(Piccolo Levriero Italiano)として知られる。この小型犬は数千年にわたり伴侶犬として飼われてきた。古代文明の絵や彫刻やレリーフから、この小型犬が古代エジプト(王によって時々ミイラにされた)だけではなく、ギリシャやローマでも親しまれていたことがわかる。伴侶犬とし作られた最初の犬種のひとつであったようだ。フルサイズのグレイハウンドをもとにこの小型犬を繁殖していくことで、古代の飼い主たちは、狩猟には出ることはなくなったが、高級な室内装飾品として価値ある、ステータスの高い犬を開発した。
この状況が長い間続いた。15世紀には、たとえば、ヤン・ファンアイクやハンス・メムリンクなどの偉大な芸術家の作品にこの犬が描かれている。イギリスでは、チューダー王朝時代とスチュアート王朝時代に非常に上流階級に好まれる犬になった。19世紀初めまでにはさらに人気が高まり、マルチーズとキング・チャールズ・スパニエルとともに上流階級でのトップの座を競い合った。
王室もしばしばこの犬の魅力にとりつかれ、可憐で敏速なイタリアン・グレイハウンドを所有していた君主の中には、チャールズ1世、アン女王、ビクトリア女王がおり、またアフリカのロウベンギューラ王はいうまでもない。ロウベンギューラ王は、1頭のイタリアン・グレイハウンドを手に入れるために牛200頭を差し出したほどこの犬に夢中になった。
悲しいことに、このハイステータスなペットの人気はあまりに過熱し、過度の小型化が進んだため重大な危険を及ぼした。小型になればなるほど、不健全な子犬が現れ始めた。犬種は絶滅の危機へと向かっていたが、1890年代、ビクトリア王朝末期に、真剣なブリーダーたちが集まってその救援にあたり、本来のより強い犬に戻り始めた。
今日、犬種は完全に回復し、か弱そうな外観にかかわらず、再び頑丈な小型犬になった。所有者のひとりは、最近飼っている小さなイタリアン・グレイハウンドが開いている窓から15フィート(約4.5m)も下に飛び降り、一瞬身震いをしただけで、マッチ棒のような脚には何の異常もなく、芝生の向こう側に急いで駆け去ったのを目撃した。性格は、気難しく、かなり内気で、優しく、恥ずかしがり屋で、気立てがよく、要求をしない、安らぎを愛する。明敏な犬であり、友達をつくるには時間がかかるが、このことをよく理解していれば、都会には理想的なペットである。驚くことに今日では人気犬種の筆頭というほどでもない。

引用:デズモンド・モリスの犬種事典